「子供が困っていること」と支援方法

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Nice!

自閉症の療育には「TEACCH」「ABA(応用行動分析)」という療育方法があります。他にもいろいろあると思いますが、私が本を読んだりして多少知っているのは、この2つです。先日、療育方法について、ちょっと考える出来事があって、いろいろ考えていたら記事にしたくなったので、書いてみたいと思います。「TEACCH」も「ABA(応用行動分析)」も、それぞれその立場をとらない方から批判があるのは、知っていました。それについて改めて考えてみたのですが、「TEACCH」には、「自閉症の言語性優位の子供には合わないんじゃないか?」とか「将来、社会に出たら、構造化は出来ないのだから意味がないんじゃないか?」という話があります。うちのTO君に当てはめて言うと、TO君は、どちらかというと言語性優位です。(「言語性優位!?」という記事も書いています。)でも、「TEACCH」の技法は、視覚支援として有効でした。確かに、TO君は耳からの言葉の入り方は、悪くありません。テレビのCMやアニメの台詞なと、めっちゃ良く彼の中に入ります。でも、指示としての言葉になると、併発していると思われるADHDのために、たくさんの指示は入りにくく、短期記憶が弱いために、指示が残らないことがあります。また、TO君は、自分のそんな所を、しっかり意識してないにも関わらず、分かっていて、そんな自分に対して不安を持っています。指示されたことに対して、何回も同じことを質問をしたり、自分が話す番じゃないのに、他の人の話を遮って自分の話をしようとするのは、自分が話そうとしたことを忘れてしまうのが怖いからです。順番だからと待たせると「忘れちゃう~!!」ってパニくってます。忘れやすいという特徴があるので、見通しがないと不安が強くでて、何も出来なくなることがあります。そういう時、「スケジュール」が役に立ちます。耳から入る「スケジュール」で、分かってはいるのに、忘れてしまうかもしれない不安があるので、紙に書いた、いつでも見ることが出来る「スケジュール」を持っていると非常に安心します。平日のいつもの時は「時間割」、特別な行事の時は「行事のスケジュール(例えば、運動会のスケジュール等)」、家族でいつもより遠くに出かける時は「地図(地図に目的地までの通る町名を書いたモノ)」「その日のスケジュール(行く場所の順番等)」「スケジュール」があるだけで安心して、不安が軽減されます。そして家族は、「次は?」「今どこ?」「もう着く?」などの質問攻めから、解放されます。ただ、最初から、「スケジュール」が有効だったわけではなくて、TO君が困っているときに、助けてくれるものだとTO君が理解し、「スケジュール」の意味付けが出来て初めて、使えるようになりました。それまでは、タダの刺激にしかならず、絵カードも写真を並べたスケジュール、生活の手順を示したものも、何度失敗したことか分かりません。でも、困っていることを助ける技法としは、いつでも見られて無くならないので、とてもいい方法だと思います。それに、混乱していると、言葉での指示は入りにくくなるし、その混乱を避けるものとしても意味があります。私が知っているのはTO君だけなので、TO君に限ってになりますが「言語性優位の子供でも「TEACCH」の技法は使う意味がある」と思います。TO君は、いわゆる三つ組みといわれる自閉症の症状のうち、見通しの悪さ、目の前にないことを想像して臨機応変に対応することが出来ないイマジネーション障害が、ものすごく強く出る人です。そのため、とても不安が強く新しい環境や、いつもと違うことは苦手です。そんなTO君が小学校生活で、なんとか落ち着いて過ごしているのも、TO君の成長もありますが、苦手なものを補うものとして「スケジュール」が使えるようになっていたことは、大きいと思います。成長するにしたがって、自分で「スケジュール」を管理し、自分の不安を自分でコントロール出来るようになると、彼の生き辛さは違ってくると思います。(いつまでも私が支援するのではなくて、TO君が自分で「スケジュール」を管理出来るようになるように導くのが私の役割だと思っています。)小学校に入ってから使った「スケジュール」は、大事に交流学級の机の中にしまってあります。学期が終わるごとに机の中身と一緒に持って帰りますが、「これは、お守り!!」と言って、新学期には、必ず持って行きます。「これがあると安心^^」するんだそうです。「将来、社会に出たら、構造化は出来ないのだから意味がないんじゃないか?」という話は、出来る限りの範囲ですればいいのであって、子供たちが構造化した場所が心地いいのであれば、落ち着く場所として用意するほうがいいと思います。TO君は、小学校では支援学級に在籍しています。そして支援級には、TO君がクールダウンするためにロッカーで仕切ったスペースがあります。そこでTO君は登校してから、好きな恐竜の図鑑や学校の図書の本を読んでクールダウンしてから交流学級に行きます。(約10分間。登校後のクールダウンを始めるまで、彼は学校の玄関を入って行けませんでした。)これもクールダウンのスペースを構造化と言えば、構造化だと言えると思います。家の中でのことを言えば、持ち物の整理整頓、片付けが構造化になるかな…と思います。カラーボックスを5個使って、TO君とKO君のおもちゃや遊ぶ道具(お絵描きの道具や絵本)を片付ける場所を作りました。片付ける場所を作る以前と今とでは、TO君にとって片付ける苦痛は減ったとは思います。それから、KO君とTO君が宿題をするとき、ダイニングテーブルに、二人が向かい合わせで座り、間には白い段ボールで衝立をしています。その段ボール1枚あるか無いかで、TO君の集中力は違います。段ボールがないとKO君が気になって気になって宿題どころじゃないのに、段ボールがあることで、なんとか怒られるほどまで、気を散らさないで済んでいます。そんな、ほんの小さなことをするかしないかで、ずいぶんTO君にとって困ることが違うと思うのです。だから、将来、構造化なんて社会に出たらないのだから…なんて言わないで、少しでも辛くない方法を出来る範囲でやっていけたらと思います。「ABA(応用行動分析)」にも、ポイント制やご褒美について「甘やかしているのではないか?」等の批判がありますが、でも親がしてほしいことをTO君にしてもらうには、とても有効でした。「TEACCH」のスケジュール等は、TO君自身が困っていることに対して使います。親がして欲しいことをスケジュール化して、TO君に強要することは、してはいけないことです。それは、TO君にとって「スケジュール」が安心するものではなくなってしまうからです。自分の意志と違うことをさせられるものが、安心できるはずがないからです。では、親がして欲しいことをしてもらうためには…というとTO君には、ポイント制が有効でした。我が家では「○×(まるばつ)シート」と子供達は言っていますが、(「行動チャート表」として記事にしたことがあります。年齢と共に、その都度進化して、現在では この記事の表とは、かわっていますが続いています。)この表があるお陰で、宿題の習慣がなんとかつきそうな所まで来ています。もう一つは、お手伝い表。毎日お手伝いする事を決めて、お手伝いしたら一つのお手伝いが5円とか10円になるというシステムです。それがTO君とKO君の「お小遣い」になります。このシステムには、TO君の問題行動を修正するのに役立っていて、かなり助かっています。だって、一筋縄じゃいかない人ですから。私は、それぞれの療育方法の「いいとこ取り」で、もしかしたら私が実践しているものは「TEACCH」や「ABA(応用行動分析)」と言えないものかもしれません。でも、それでもいいと思っています。方法にこだわるより、目の前の困っている子供を少しでも辛くない方法で助けてあげられるのであれば、それでいいと思っています。療育方法を実践する立場の親としては、子供の支援する方法を限定してしまったり、療育方法をまるごと否定してしまうことは、その方法で伸びるかもしれない可能性を否定してしまうようで、とても悲しいです。それぞれの療育方法には、いいところがあり、伸びていく部分も違いがあると思います。その子にあわせて、場面にあわせて、場所にあわせて、その子が伸びる方法を使うべきだと思って、私は実践しています。だから、支援してもらう側からのお願いです。支援する方法を議論するのではなくて、困っている子供をどうしたら助けてあげられるか、どう支援してあげたら良くなるのかを考えて欲しいのです。子供が何に困っているか、その困っていることを取り除いたり、軽くしてあげたり出来る方法を、療育方法にこだわらず、考えて欲しいのです。各方面の専門家の方々、病院、療育機関、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校…全てにおいて、いつでも、どこでも連携がとれた支援が受けられる社会になって欲しいです。いつか、そんな社会になることを願っています。↑ランキングに参加しています。ポチッと応援のクリックをしていただけたら、うれしいです^^